紙吹雪
「土方さんですよ。土方歳三さんっていうんです」
「土方、歳三…」
その名前を繰り返すように呟けば、にこりと微笑む惣次郎。
馨はこくりと頷くと再び彼が消えていった方へと視線を向けた。
あの人…
姿を見たのはほんの僅かな時間。
しかし微かに見えたその瞳の奥に感じたのは間違いなく燃え盛るような熱き炎で。
固い、意志のような。
強い、野望のような。
静かに秘められた火傷しそうなほどに熱をもった炎。
そんな強い瞳を持った男だった。
それが馨が歳三と出会った初めての瞬間。
馨はまだ知らない。
その出会いが、後に己の道を大きく変える出会いであったことを。