紙吹雪
《光の瞳を持った人》
「ふぅ…」
ぽちゃん、と川に両足を浸けながら小さな溜息を吐く馨。
ゆらゆらと流れる冷たい水の感触が心地いい。
まだ体についた血が全て落ちたというわけではないのだが、何となく面倒臭くなりそのまま岸へと足を運んだ。
普段ならそんな中途半端な行動をすることは絶対にないのだが、今日は何故か気が進まなくて。
幸いこの辺りはまだ薄暗く追っ手がこれ以上追いかけてくる気配もなかったので、馨はその小さな体をぽすんと草の中に沈めた。
鼻を擽る青々しい匂いにふっと笑みが零れる。
見上げれば、青と黒が混ざったような空の色。
いつも見ている馴染み深いその色をぼんやりと眺める。
この空にもすぐに白が溶けてくるのだろう。