紙吹雪
馨とは相容れることのないあの色が。
その風景に思わず苦笑いが漏れる。
「これから先…新月までどないしよか…」
この地に足を踏み入れてから既に半年。
未だ、目的の刀は馨のもとに返ってきていない。
「もう少し早う終わる思ってたんやけどなぁ…」
そうはいかない現実に馨は人知れず焦っていた。
母や父にはまだまだ全てが劣る自身の弱さ。
その歯痒さが更に馨を焦らせる。
それに、いつまでもこの地で惣次郎を頼るわけにもいかなくなってきた。
最近巷では物取りの正体が惣次郎なのではないかという噂がまことしやかに囁かれている。
勿論根拠などないただの噂。
しかし、噂とは恐ろしいもので。
嘘か真かわからぬそれは、本人の意思など関係なく時にその居場所まで奪ってしまうものだ。