紙吹雪
「……んぅ…」
さすがの馨もこの押しには観念したようで、ちらりと僅かに顔を上げ歳三を見た。
ドクンッ
一際大きく跳ねる心臓。
馨が頬を紅潮させ、恥ずかしさからか潤んだ瞳で自分を見上げている。
その事実が残り少ない歳三の理性を完全に吹き飛ばした。
次の瞬間には手を伸ばし、自分の腕でしっかりと馨を抱え込んでいた歳三。
「…あ、あの…歳さん…?」
驚き言葉をつまらせる馨。
軽く体を動かそうとするが、歳三の腕はそれを許さない。
困り果てる馨とは反対に、歳三は今の状況に安心していた。
馨が腕の中にいる。
それだけでふっと沸き上がる至福感。
それは歳三が今まで感じたことのないもので。
「歳さ…ん痛…」
強くなった腕の力に馨が身じろぐが、歳三はけしてその手を緩めようとはしない。