紙吹雪
「あの…離し、て?」
馨は困ったような表情をしながらも柔らかく歳三を諭す。
しかし歳三にとってはその声すら離すことが出来ない要因となった。
「…嫌だ」
駄々をこねるように腕の力を更に強める歳三。
離すもんか、と馨の肩に顔を埋める。
「だ、誰かに見られたら、あの…」
馨はもごもごと小さな声で反論するが歳三は聞く耳を持たない。
ただただ嫌だ、と首を振るだけである。
「…私みたいなのとこんなことしてたら…歳さん、笑われるよ…?」
確かに齢十にも満たない女を十七の青年がこんな道端で抱き締めるなど言語両断、破廉恥極まりない行為だ。
しかし、既に理性など持ち合わせていない歳三にはそんなことは関係ない。
そもそも犯罪的な年齢じゃねぇ筈だ。
かの前田利家の正妻だって齢十二ほどで嫁いだじゃねぇか!
というのが歳三の言い分である。