紙吹雪
それに、なぜ馨がそこまで自分を卑下にするのか歳三にはわからなかった。
「んなの、どうでもいい」
「──────!?」
歳三の言葉に馨は再び目を見開く。
驚く馨をよそに歳三は馨を抱き締めたまま顔を上げ、目を見つめて言った。
「周りは関係ねぇんだ。勝手に言わせときゃいい。俺は…俺は今かおと居たい。かおとこうしてたい」
その眼差しに嘘はなくて。
馨は何も言うことが出来ない。
「…だめ…?」
首を傾げながら問い掛ける歳三は、さながら捨てられた犬のようである。
他人なんか関係ないんだ。
これで笑われたって、恥じることじゃねぇ。
大事なのは、かおが良いと言ってくれるかどうかだけ。
求めるように視線を向ければ馨は小さく首を横に振り、歳三の着物の裾をギュウッと掴んだ。
ドクン…ドクン…ドクン
着物ごしに早い鼓動と暑い体温が伝わる。
それは歳三のものなのか、それとも馨のものなのか。