紙吹雪




それに、なぜ馨がそこまで自分を卑下にするのか歳三にはわからなかった。




「んなの、どうでもいい」

「──────!?」




歳三の言葉に馨は再び目を見開く。

驚く馨をよそに歳三は馨を抱き締めたまま顔を上げ、目を見つめて言った。



「周りは関係ねぇんだ。勝手に言わせときゃいい。俺は…俺は今かおと居たい。かおとこうしてたい」



その眼差しに嘘はなくて。
馨は何も言うことが出来ない。



「…だめ…?」



首を傾げながら問い掛ける歳三は、さながら捨てられた犬のようである。



他人なんか関係ないんだ。
これで笑われたって、恥じることじゃねぇ。

大事なのは、かおが良いと言ってくれるかどうかだけ。



求めるように視線を向ければ馨は小さく首を横に振り、歳三の着物の裾をギュウッと掴んだ。



ドクン…ドクン…ドクン



着物ごしに早い鼓動と暑い体温が伝わる。



それは歳三のものなのか、それとも馨のものなのか。



< 43 / 320 >

この作品をシェア

pagetop