紙吹雪
「歳さん、お仕事行ってきて…?」
頬を撫でられながら馨は真っすぐに歳三を見て言った。
歳三が馨にそう言われて行かないなどと言えるはずもなく。
「ん。悪いな、ちょっと行ってくる」
「はい。お気を付けて」
「一人で帰れるか?」
「大丈夫ですよっ!いってらっしゃい」
にこりと笑った馨に漸く重い腰を上げた歳三。
自分を見上げて笑う馨に歳三は嬉しそうに頬を緩める。
その会話を勝太が
"何だその夫婦みたいな会話は"
と思いながら聞いていたのは言うまでもない。
「では、私はこれで。島崎さんもお気を付けて」
馨は再度深く一礼すると歳三たちに背を向け歩きだした。
十歳とは思えない律儀な態度に何とも言えない疑問を感じた勝太。
だが"何"と確信のないそれをむやみに口に出すわけにもいかない。