紙吹雪
「あぁ。一人の女を自分だけのものにしたい。それも立派な"本気"、立派な"好き"さ。歳の場合、典型的な一目惚れみたいだな」
勝太の言葉がすとん、と歳三の胸に落ちる。
一目惚れ。
今まで信じたことのなかったそれ。
所詮は女の戯言、男の口説き文句だろうと思ってたんだ。
でも今は信じられる。
初めてかおに会ったときの感覚も、それなら説明がつく。
あぁ…俺、一目惚れだったんだ。
「…俺が…かおを…すき…」
口に出してみれば驚くほど馴染んだ言葉。まるでそれ以外に使えないような言葉だと歳三は思った。
語尾の上がらないそれは歳三が自分の気持ちに気付いた…気持ちを認めた証。
「…かおを、すき…」
確かめるようにもう一度呟いて、手に力を込める。
土方歳三、十七年の人生で初めて大切なものに気付いた瞬間だった。
第二章〜恋心〜・完