紙吹雪
そもそも歳三は、物取りの噂を耳にするたび何か違和感を感じていた。
「だってよ…物取りの対象も、運悪く殺されちまった奴も…大抵よくねぇ商いやってた奴らなんだろ?」
変じゃねぇ?と歳三は勝太に向かって首を捻る。
そうなのだ。
噂で聞く物取りは、なにも無差別に行われている所業ではないらしい。
対象となった店や人は皆、裏で悪質な取引に手を染めている奴らばかりで、いつ命を狙われてもおかしくない輩ばかり。
それに引きかえ、金の有る家ばかりが狙われたなどという話は聞いたことがなかった。
「金があるとこ狙うなら、俺ん家だって危ねぇぜ」
前に述べたように歳三の家はそれなりに大きな農家である。
無差別な物取りなら狙われても何らおかしくはない。