紙吹雪
歳三が驚くのも無理はない。
今のご時世、武士といえども簡単に人を斬ることは少なくなっていた。
侍とは名ばかりで、実際にはその手に算盤や筆を持ち商いに精を出す。それが現状。
果たして今、かつての侍の意識を持った者がどれほどいるのだろうか。
そんな世だからこそ歳三は憧れるのだ。
今は忘れ去られた気高き武士の姿に。
「まぁ噂なんだけどな。でも…その噂のせいで惣次郎が疑われてるんだよ」
「惣のやつが…ねぇ…」
悩ましげに顔を歪め真剣に話している勝太には悪いが、歳三は何とも言えない曖昧な返事を返す。
いまいち現実味を帯びないその噂に、歳三は一瞬驚きはしたものの、どうも強い関心をひかれなかった。