紙吹雪
二人の背中が闇に紛れた頃、一羽の鷹が惣次郎の頭上を巡回し始めた。
「…相変わらず、頭のいい鳥ですね」
頭が下がります、とその鳥を見ながら呟く惣次郎。
「……とりあえず、早く文を書かなくちゃ」
そのためにわざわざ飛んできてくれたのでしょう?
惣次郎がそう囁けば、鷹はまるで言葉を理解したように惣次郎の肩へ羽を休めた。
ありがとうございますと鷹に向かって礼を告げると、惣次郎は急ぎ足で墨と筆のある部屋へと駆け込む。
「間に合ってくれれば…いいんですが…」
せっせと筆を動かす惣次郎の横で、名も知らぬ鷹だけが全てを知っているように気高くたたずんでいた。