紙吹雪




そう思うものの、いまいち腑に落ちない。



なぜ誰もそれを指摘しないのか。気に留めないのか。


奉行所の役人たちですら、ただ物取りと騒ぐだけ。



気付く者がいないのだろうか。





「………?」





そこまで考えて歳三は、ふと足を止めた。





今、何かが頭の中を掠めた気が。



…何だ…?


誰も気付かない、奉行所……違う?


気付かない、じゃないのか…?


じゃあ何…





「…気付いてて、言わない…?」





口から出た言葉に歳三は首を振る。




いやいやいや、まさかな。

だってそれじゃあ、みすみす逃がしてるってことになるじゃねぇかよ。




……逃がしてるのか?わざと。




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