兎心の宝箱【短編集】
「えっ、と服でも見に行こうかと……」
「うわぁ、僕も一緒に行っていい?」
いきなりな展開に、私はもう何がなんだか。
「いっ、いいけど、嫌じゃないの?」
辛うじて口からでた言葉は、それだけだった。
「勿論、嫌じゃないよ。それとも迷惑だった? 顔色、なんか良くなさそうだし」
心配そうに覗きこむ涼に、慌てて首を振る。
「やったぁ! 奈美ちゃんとデートだぁ!」
そう言って飛び跳ねる涼。
……ごめん、裕子。
私、今日一線越えちゃうかもしれない。