兎心の宝箱【短編集】
やっぱり、分かっていない。
もう想いは、止まらない。
「付き合って欲しいの、アナタが入学した時から好きだったの」
えっ?
夕暮れの日に映える、涼の顔が固まる。
ドサッ、と後ろから何かが落ちる音がする。
振り返ると裕子が立っていた。
そういえば裕子の家はこの公園を抜けた先だった。
足元には、カバンが落ちている。
どうやら聞かれてしまったみたいだ。
「アンタ、まさか、本当に告白するなんて」
裕子が戸惑っている。
そして荒川涼の口が開いた。