兎心の宝箱【短編集】
 とても無機質な声。

 先程の助けを求めた声は、決して大丈夫な声ではなかった。

 掛け直してもまた繋がらない。

 木内優子は、何か釈然としない物を感じながらも、どうする事も出来ず途方にくれた。

 お笑い番組は、とっくに終わりを告げ。

 覆面を付けた怪物の出る映画を放映していた。

 怪物の持つチェーンソーが、美紀を切り刻んでいる光景が頭に浮かぶ。

 その思いを振り払うように優子はテレビを消した。

 母親がお風呂が沸いたと呼びにきたが、優子は調子が悪いから入りたくない、とだけ告げるとベッドに潜り込んだ。




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