兎心の宝箱【短編集】

 次の日、優子は重い頭を振り払って布団から抜け出す。

 昨日は、結局あの後眠る事ができなかった。

 気分がのらないが、熱いシャワーを浴びてから学校へ向かう。

 美紀は来ているだろうか?

 来ていなかったらどうしよう?

 そんな事ばかり頭の中を駆け巡る。

 教室にたどり着く。

 美紀はまだ来ていない。

 椅子に座って教室の入口をみつめる。

「木内さん……。木内さん……」 

 優子が呼びかけに気づいて横を見ると。

 美紀の彼氏の前畑が立っていた。

「どうしたの? 何度も呼びかけても返事しないし」

 そんなに何度も呼びかけられたのだろうか?

 優子は、全く呼びかけられていた事にきづいてなかった。

 前畑は、不思議な顔をしている。

 昨日の事を言うべきだろうか? 優子の脳裏に昨日の事が蘇る。

 躊躇していると、前畑が話かけてきた。

「美紀は何か君に相談しなかったかい?」

「えっ?」
 
「例えば助けて! とか言わなかったかい?」


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