兎心の宝箱【短編集】
核心を突く言葉。
優子は、口を開けたまま固まっている。
何を言えばいいのか? 分からない様子だ。
その時、美紀が教室の入り口に見えた。
「美紀! 昨日本当に大丈夫だったの?」
前畑から逃げるように美紀に飛びつく。
美紀の言葉は冷たかった。
「大丈夫。何も心配はいらない」
今まで聞いた事のない程冷たい口調に、優子は二の句を告げる事が出来なかった。
何度も休憩時間に話掛けてが、感情のこもってない言葉しか返ってこない。
放課後、やはり感情のない答えしか返してこないまま、帰って行く美紀の背中を見つめながら、木内優子は途方に暮れていた。
彼女に何かあった事は、確実だが、優子はどうしたらいいのかが思いつかないでいた。
そんな時、前畑が声を掛けてきた。
「どうしたのだろうね? 僕も昨日からまともに相手してもらえてないんだ。よかったら相談にのってくれないか?」