兎心の宝箱【短編集】
木内優子は一旦家に帰ってから、前畑の指定してきた喫茶店に入った。
モダンな雰囲気の、彼女が前から気になっていたお店だ。
入ってすぐ一番奥の席に座る前畑を見つける。
「ごめん待った?」
「僕も今来た所だよ」
「そう良かった」
それだけ言うと二人共、席に着く。
優子は何から話したらいいのか思いつかず、躊躇しているとウェイトレスがやってきた。
「優子ちゃんは、ミルクティーで良かったよね」
ウェイトレスが彼女の前にミルクティーを置く。
彼女はミルクティーが好きだ。
しかし彼の前でそんな話をしたことがあっただろうか? そんな疑問が優子の脳裏を駆けめぐる。
美紀が彼に話した事があるのかもしれない。
彼女はそう思う事にした。
それをなぞるかのように彼が口を開く。
「美紀ちゃんからミルクティーが好きって聞いたんだけど迷惑だった?」
予想通りの答えに満足しながらも内心は、ダージリンではなくアールグレイのミルクティーの方が良かったのだけど、と付け加えておいた。