兎心の宝箱【短編集】

 木内優子は一旦家に帰ってから、前畑の指定してきた喫茶店に入った。

 モダンな雰囲気の、彼女が前から気になっていたお店だ。

 入ってすぐ一番奥の席に座る前畑を見つける。

「ごめん待った?」

「僕も今来た所だよ」

「そう良かった」

 それだけ言うと二人共、席に着く。

 優子は何から話したらいいのか思いつかず、躊躇しているとウェイトレスがやってきた。

「優子ちゃんは、ミルクティーで良かったよね」

 ウェイトレスが彼女の前にミルクティーを置く。

 彼女はミルクティーが好きだ。

 しかし彼の前でそんな話をしたことがあっただろうか? そんな疑問が優子の脳裏を駆けめぐる。

 美紀が彼に話した事があるのかもしれない。

 彼女はそう思う事にした。

 それをなぞるかのように彼が口を開く。

「美紀ちゃんからミルクティーが好きって聞いたんだけど迷惑だった?」

 予想通りの答えに満足しながらも内心は、ダージリンではなくアールグレイのミルクティーの方が良かったのだけど、と付け加えておいた。

< 156 / 416 >

この作品をシェア

pagetop