兎心の宝箱【短編集】
「それより、美紀の事だけど。昨日前畑さんにも電話あったの?」

「あぁ、助けて!ってすごく切羽詰まった感じで電話があったのだけど、すぐに切れてしまって」

 そこで少し気持ちを落ち着かせるように話す。

 続いて彼からでた言葉は、優子には衝撃的だった。
 
「その後また掛かってけど今度は、別れてくれって一言だけ言って切られたよ。優子ちゃんは何か聞いていないかい?」

「そんな!? いえ……何も聞いていないです」

 美紀は話をするたびに前畑君、前畑君と彼の話をしていたからだ。

 彼の方か振るならともかく、美紀の方から振るなんて事は彼女には、考えられなかった。

 だがそんな嘘を言う理由がない。

 ましてや彼女に相談までしてるのだ。

「昨日は……」

 昨日の電話の事を話す。

 その後お互いに考えた事を話したが、結局美紀がいないのに結論など出せる筈もなく、窓の外は日が落ちて、いつの間にか暗闇を見せていた。


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