兎心の宝箱【短編集】
そろそろ帰らないと、優子がそう思うと、前畑が帰ろうかと呟いた。
「ごめんね、力になれずに」
「こちらこそ。でも美紀のあの様子は心配だな。もう僕は彼氏とは認めてもらえないかもしれないが、何かあったら連絡してくれ。僕も何か気づいたら連絡するよ」
えぇ、お願いします。
優子はそれだけ返すと、別れて帰路についた。
愛想笑いだとは思うのだか、最後のセリフを話した時の前畑の笑顔がなぜか脳裏から離れなかった。