兎心の宝箱【短編集】

「マスター。緑色した髪の長い男が、いつも飲んでいたコーヒーを頼む」

 月の裏側にある、ムーンポートの町。火星移住の足掛かりとして凡そ120年前に作られたこの町は、度重なる開発を受けて、いまや町と言うにはあまりに巨大で、あまりに無骨な様相を呈していた。
 その乱立されたビルの間の一角。そこにひっそりと佇む様にカフェ《ルナファクト》はあった。

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