兎心の宝箱【短編集】

 店内には、白髭を蓄えたえらく無表情なマスターとカウンターに佇む男が一人。男は月の住人が好んで着るゆったりとした紫色の服装をしていた。

「奴は、もう来れないのか?」

「あぁ……。奴が地球産の上手いコーヒーを飲ませる行き着けがあると言っててな。週末に飲みに来る約束をしていたんだ」

 男の脳裏に、火星人との戦闘で光線に貫かれる同僚の姿が映しだされる。

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