兎心の宝箱【短編集】

「そうか……」

マスターは、表情を変える事なくそう呟くと、豆を丁寧に挽いていく。やがて挽き終わると今度はその粉を二つ重ねたカップの上に入れる。その様子を男は不思議そうに眺めている。

「地球産の豆は、粉にしてから飲むのかい」

「コーヒーってのは、そうやって飲むのが一番上手いんだ。豆がカスになるまで押し潰して抽出するくらいなら飲まない方がいい」

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