兎心の宝箱【短編集】

マスターは、沸騰した湯を少し垂らして蒸らした後、数度に分けて湯を注いでいく。出されたコーヒーは、男が見たことも無い程とても暗く、深く、それでいてどこか透き通っており、中心からは芳醇な香りが渦を巻いて立ち上ってくる。
男はマスターに勧められるまま、一口、二口と喉に流し込む。喉を通る度に程良い酸味と苦味が口の中に広がっていく。

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