兎心の宝箱【短編集】
「犯人しかいませんね」
ノーベルの言葉に、みんな顔色を変える。そこでまた口を湿らす為にカップを手にとる。
「それで? 最終的に誰が犯人だと言いたいんだ」
皆の注目がノーベルに集まるのが面白くないのか、ムスッとした顔のままガッデム警部は先を促す。
「焦らないで下さい。あの悲鳴が男の物だったのは、皆さん認める所でしょう。そうすると私を含め三人に絞られる」
ロバートとアーリーの顔が青ざめる。
「わっ、私は殺していないぞ!」
「私だって殺していない、ロバートアンタが殺したんだろう? 知っているぞ! アンタがグレーバー卿に金を借りていたのは」
食堂の中は一時騒然とした。ガッデム警部は、すぐに周りにいた刑事に二人を押さえるように言う。
刑事に押さえられた二人は、口々に罵りあうが、やがて大人しくなった。