兎心の宝箱【短編集】

 その杖を見た王の隣に立つ宮廷魔術師は、王に近づき何事かを呟く。

「その杖、見た所魔力が無いようじゃがそれでも魔王の杖と言い張るか?」

 その言い方に、やっと俺も気づいた。

 俺が倒した事を信じていないのだろう。

「ええ。2ヶ月前に魔王を打ち倒すと同時に魔力を失いました。歩いて魔国を引き返してきたので報告も遅くなりました。因みに仲間は、激しい戦いの為みんな命を落としましたので証人もおりません。信じては頂けませんか?」

 王はしばらく目を閉じて熟考していたが、やがて口を開いた。

「確かにお主の口振りは、説得力はある。しかしのぉ。2ヶ月前に魔族が撤退、統率をなくし、世界を覆っていた闇の気配が晴れてから、自分が魔王を倒したと言ってきたのはお主で二十人目じゃ。信ずるにたる証拠がなければお主を勇者と認める事はできん!」

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