兎心の宝箱【短編集】

 いつの間にかミリアが傍らに立っている。

「あの程度ならば、それ程問題にはなるまい。それにどの道今回勇者に負ければ、減点など意味がない」

「その姿勢は、頂けませんわ魔王様。まだ今回の戦いは、始まったばかりですよ」

 ミリアは、そう言って妖艶に微笑む。二千年前から何も変わらない微笑み。

「こうもハンディキャップが大きいとグレたくもなるよ」

 そう言ってミリアを強く抱き寄せる。

「あらあら、千年振りですから優しくして下さいませね」

 そして、千年振りにミリアの甘い香りに包まれて、宵闇の中へ落ちていった。
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