兎心の宝箱【短編集】

 俺は彼女が体勢を整える前に右腕を抑えて、首を締め上げる。

「悪いな、俺は立ち技だけじゃ無いんでな」

 彼女は、声も出せずに腕を外そうとするが抜け出せない。

 力は、純粋にこちらが上なのでここまできたら彼女が抜け出せる通りはない。

 ただ動く彼女の甘い匂いが鼻につく。鍛えてはいても女性特有の柔らかさが、俺の意志を挫こうとする。

 だからこの手は使いたく無かったんだ。

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