兎心の宝箱【短編集】
「俺を呼んだのは、お前か?」
今、私の目の前に漆黒の翼を持つ悪魔が立っている。
「えぇこの私、黒峰咲(くろみねさき)が呼びました。そんなに人間と変わらないですね」
そう、漆黒の翼以外は、彼に人間との違いは見られない。
着ている物も、教科書で見たローマ人の彫刻みたいに、ゆったりとした布を纏っている。
「だぁぁ、今時召還とかすんなよなぁ。あり得ねえよ。早く返してくれ!」
「へっ!? ちょっと待ってよ。まだ願いを叶えて貰ってないし」
悪魔の言葉に慌てて答える。
「はぁ? 何で俺がアンタの願いを叶えなきゃいけねえんだ? というか、暑いし部屋が暗えよ、電気付けろ電気!」
部屋の中は蝋燭の明かりだけだ。
確かに暗いが、悪魔に怒られるとは思わなかった。
私は、言われた通り部屋の電気をつける。
明るくなった部屋の真ん中には、模造紙が敷いてあり、そこには魔法陣が書かれている。
悪魔は、暑い、暑いといいながら部屋いっぱいに置かれた蝋燭を消してまわる。
挙げ句の果てには、勝手にエアコンまでいれてるし。
「うひょ~、涼し~い。で、何でまた俺を呼び出したんだ? 仕事あるし、早く帰りたいんだけど」