兎心の宝箱【短編集】
「そんなの知らないわよ! お願いだから、アイツを殺して! 私はどうなってもいいから!」

 もう嫌、何で私ばっかりこんなに不幸になるのよ。

「はぁ、逆ギレかよ。泣きたいのはこっちだよ。完全に遅刻じゃねぇか」

「勝手に帰ったらいいじゃない! どうせ私は不幸な人間だし、もういいわよ」

 また、悪魔が溜め息をついたかと思うと今度は、魔法陣を丸めて横にどけて、勝手に座布団を敷いて座る。

「一人じゃ帰れないから困ってるんだろうが。まぁ、お前も座れ。全く人間ってのはいつの時代も変わらねーな」

 願いを叶えてくれる気になったのかな?

 私が座布団に座ると悪魔が口を開く。

「で、何で人を殺したいんだ?」

 やっと聞いてくれるみたいだ。

「3股かけられてたの、お前だけだって言ってたのに」

「それで?」

 悪魔が先を促す。

「それだけだけど……」

 そう、それだけだけど悲しみが私の心を塗りつぶしていく。

 涙がまたでてきた。

「お前ね、そんな事で一々人殺し頼まれて、受けてたら世界の半分はいなくなるぞ」

 やっぱり願いを叶えてくれる訳じゃないんだ。

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