兎心の宝箱【短編集】
「アイタタタッ!」
僕は、ヒンヤリとした空気と床の硬さに思わず目が覚めた。
石壁に囲まれた無機質な部屋。
寝る前は、普通に自分の部屋にいたのになんで?
「お目覚めのようですな。山崎様」
振り向くとそこには、タキシードを着た兎が立っていた。
「う……さぎ?」
「えぇ兎です。お腹が空いておいででしょう? どうぞこちらへ」
そういって兎は、背中を向けると歩きだした。
「ちょっ、ちょっと待って下さい。アナタは本当に兎ですか? というかここはどこ? それとも僕は夢でも見てるのか?」
兎は足を止めないので、仕方なく後ろを付いていきながら質問を投げかけてみた。
彼? は、こちらをチラリとも見ずに答える。
「どこからどうみても兎でしょう? ここはバトルオブアニマルズの会場です。夢かどうか? と言われれば夢の方が百倍良かったでしょうね」
兎は確かにどこからどうみても兎だ。
赤ちゃん程の背丈しかないから、中に人が入っているとは考えられない。
どういう事だ?