兎心の宝箱【短編集】
「今日の放課後サッカー部の練習見に行こうよ。」
手作りのお弁当をつつきながら藍(あい)がつぶやく。
「えっ? なんで突然そんな話になるの?」
答えた瞬間、自分でも顔が強張っている事に気づいた。
実際には自分でも何故そんな事を言われるか気づいているのだから。
ただその理由が最終的に行き着く場所を知っているから。
知っているからこそ気づきたくないのだ。
「そんな事より藍! 午後の英語の宿題はできたの?」
「またそうやってはぐらかそう……って!? 忘れてた! ごめん! 見せて! お願い!」
どうやらこれ以上の追求はかわすことに成功したみたいだ。
藍がお弁当の残りを急いで食べ始めたのを横目に、教室の窓からグラウンドを眺める。
ちょうどサッカー部が練習をしていた。
あの人は、後半年もすれば卒業してしまうと思うと溜め息がもれる。
藍のにやけ顔が視界の端に入ってきたが気付かない事にしておく。
ただ英語の宿題の答えは違う所を教えてやろう、と思うのだった。
──。
「ねぇ? なんで? 奈央(なお)のお兄ちゃんもいるんだしさ。グラウンドに入れてもらおうよ!」
「いいの! 練習の邪魔になるし、それより藍。私早く帰らないと、用事があるんだけど」
えーっ? とフェンスにしがみついた藍が頬を膨らます。
「せっかく来たのにー? 奈央のお兄ちゃん高科(たかしな)先輩の親友なんでしょ? 有効利用したらいいのに。先輩競争率高いのにさ」
ごめんね。
そう言いながら学校の門に向かって歩きだす。
後ろで藍がこっちに手を振ってるよ、と騒ぎたててるが後ろ向きに愛想だけ手で返しておいた。
手作りのお弁当をつつきながら藍(あい)がつぶやく。
「えっ? なんで突然そんな話になるの?」
答えた瞬間、自分でも顔が強張っている事に気づいた。
実際には自分でも何故そんな事を言われるか気づいているのだから。
ただその理由が最終的に行き着く場所を知っているから。
知っているからこそ気づきたくないのだ。
「そんな事より藍! 午後の英語の宿題はできたの?」
「またそうやってはぐらかそう……って!? 忘れてた! ごめん! 見せて! お願い!」
どうやらこれ以上の追求はかわすことに成功したみたいだ。
藍がお弁当の残りを急いで食べ始めたのを横目に、教室の窓からグラウンドを眺める。
ちょうどサッカー部が練習をしていた。
あの人は、後半年もすれば卒業してしまうと思うと溜め息がもれる。
藍のにやけ顔が視界の端に入ってきたが気付かない事にしておく。
ただ英語の宿題の答えは違う所を教えてやろう、と思うのだった。
──。
「ねぇ? なんで? 奈央(なお)のお兄ちゃんもいるんだしさ。グラウンドに入れてもらおうよ!」
「いいの! 練習の邪魔になるし、それより藍。私早く帰らないと、用事があるんだけど」
えーっ? とフェンスにしがみついた藍が頬を膨らます。
「せっかく来たのにー? 奈央のお兄ちゃん高科(たかしな)先輩の親友なんでしょ? 有効利用したらいいのに。先輩競争率高いのにさ」
ごめんね。
そう言いながら学校の門に向かって歩きだす。
後ろで藍がこっちに手を振ってるよ、と騒ぎたててるが後ろ向きに愛想だけ手で返しておいた。