兎心の宝箱【短編集】
それから更に一年程そんな関係が続いた。
永遠に続くかと思われた幸せな時間だった。
でも私は、見てしまった。私が避けて追求しなかった事実を。
彼が隠した事実を。
その日私は、近くにできた大型のショッピングモールで一人買い物をしていた。
彼に贈る為のバレンタインチョコを選んでいたのだ。
一通り選んで、彼の分と自分へのご褒美を購入した。
その後さっさと帰れば良かったのだ。
でも目新しいショップと冬物のセールに目を奪われて、つい長居してしまった。
そして見てしまった。
向かいの玩具屋さんで、娘らしき女の子に手を引かれて歩いている彼を。
私といる時には、見せた事の無い笑顔で……。
喫茶店でお茶をする関係になった頃から女の感は告げていた。
多分妻帯者だと。
この人は私の物にはならないと。
分かっていた筈なのだ。
けれど私は、逃げ出した。