兎心の宝箱【短編集】
「あっママ!」
ベッドから上半身を出してアリアは、本を読んでいた。
母親に良く似たウェーブのかかったブロンドの髪が、ランプに照らされてキラキラと光っている。
「もう……、続きは明日にしなさい」
「うん、でも後もう少しなの。あのね、ウサギさんの話がたくさん載ってて……」
「アリア」
娘は、小さな手で眠たそうな瞼をこすりながら、必死に訴え掛けてくる。
こんなに必死に本を読む娘を見たのは初めてだ。