兎心の宝箱【短編集】
「イジメは許せないな。でも距離は置けない。彼女はもう、俺の大切な友人だ」
「お前まさか?」
思いの外熱を帯びた俺の言葉に、宮村は少し驚いた。
「都合がいいのは、わかっているさ。そのうちケジメはつけるさ」
「分かったよ。また何か気づいたら伝えるよ。でも早めにした方がいいぞ。エスカレートする前にな」
それからも、俺と有坂鈴の友人関係は続いた。
宮村からは、イジメの話をその後も何度か聞いたが、相変わらず彼女は、笑っていた。
彼女が笑っているから。
その問題を棚上げにして、俺は、友人関係というひどく楽な居場所で止まっていた。