兎心の宝箱【短編集】
「それからかな? いつも笑うようになったのは。お金があっても不幸せな人はいっぱいいるし、格好いい彼氏がいても不幸せな人もいる。なら幸せって結局気の持ちようじゃない?」
そこで、一息ついてから彼女は続ける。
涙は止まり、彼女の顔には満面の笑みがこぼれている。
「ならさ、私は幸せだから笑うの。どんなにつらい事があっても、どんなに悲しい事があっても、どんなに運が悪くても私は……有坂鈴は笑ってみせる。だから私は世界一幸せなんだ!」
それが彼女の決意。
それが彼女の……有坂鈴の生き様なのだろう。
少し恥ずかしくなったのか、有坂は目をそらしながら言葉を紡ぐ。
「つまんない事聞かせちゃったね。もう大丈夫、心配かけてごめんね。教室にもどろっか? あっ……黒瀬君にも迷惑掛けるから、友達付き合いも考えなきゃね」
少し影のある笑いを浮かべながら、彼女が呟く。
──勝手な事を。
「あぁ友達は、おしまいだ。」
「そうだよね。うんしようがないよ」
彼女は、笑みを崩さない。