兎心の宝箱【短編集】
「俺!?」
周りには、俺以外誰もいない。
親友の神谷君は、いつのまにか出口付近で観戦してらっしゃる。
少女は、スタスタと近づいてくる。
そして残り二メートルの距離まで近づくと俺を睨みつける。
「あの? 俺がなんかしたか?」
彼女の顔を見るが見覚えはない。
「頼もう!」
彼女の顔が右にぶれる。
そのまま流れるように背中が見えたかと思うと視界の端で跳ね上がってくる足を捉えた。
間一髪、知らない少女が放った後ろ回し蹴りが、頭上を通り過ぎる。
一瞬ラッキーと思うが見えたのは黒いスパッツだけだった。