聞こえる。
「村か……小百合っ!!」
「…ァアァァ…」
村上の声じゃない。
となると父親だろうか…
「小百合!!!」
「たっ…拓海くん!!」
服も破れ、顔には大きな痣がある。
目の前には包丁を持った男。
「ちっくしょーー!!」
力任せに背中から体当たりした俺の突撃は、こっちに気付いていなかった男の不意をつき、男は思い切り壁にぶつかった。
「小百合っ急げっっ」
「えっ?」
壁にかけてある半袖ワンピースを上から着せて、村上の手をつかんで外に出た。
そのまま走って家に向かう。
視界の端にあの男がこっちを向いているのがわかった。
とにかくここを離れることしか考えられなくて、必死になって家に走った。
家についたら警察に連絡して、あの父親を捕まえてもらう。
そう思った。