聞こえる。
知らない男が息子にナイフを向けている。
しかし、とくに興味もないのでほって置いた。
別に何も考えずに…寝ようと思った。しかし…
「拓海くん?!」
綺麗な声。
高くて可愛らしい女の子の声が息子を呼ぶ。
そこで虚ろな目を開けてリビングを見る。
息子が女の子をかばって上に行くのが見えた。
現実感がないまま…ただ思う。
あぁ…好きな子を守る息子は、もう本当に大人らしい…
ついこの前まで子供だったはずなのに………
--私は…どれくらい夢を見ていたのだろうか…
もう長い間…ずっと夢の中にいた気がする。
だって…あの子があんなに大人に見えてしまった。
「拓海…」
大事で…なのに何一つ親らしいことをしてあげられなかった…可愛いくて、世界1大切な…
たった一人の家族…
「……たっ拓海!!!!」
走る。全然使わなかった足は、何度も膝をつき…転びそうになったけれど…必死だった。