聞こえる。
長い…痛みがなくて不思議に思い、恐る恐る目を開けた。
「母さん…?」
「拓海……だい…じょ、ぶ?」
「なんで?今まで…動かなかったのに…どうして…」
「ごめんなさい…ゴメン…ね……今さらに…なって…」
「橋本さんっ!!大丈夫ですか?!」
警察が入ってきて、驚いて動けない父親を捕まえる。
「ゴメン…ごめ…」
必死に謝る自分の家族。
背中の心臓あたりに深々と刺さる包丁。
胸の中にいる小百合も目を見開いている。
「母さん…」
「違うのよ…あなたさえ……いなくなればなんて……思って…ない。……むしろ…いないと生きていけなかった」
「かあさ…」
「許してなんて言えないけど…それでも…ごめんなさい……私の…一番の……」
「母さん?!」
「大事な…た、た…ひ、とりの……た…くみ……」
「母さん!!!しっかりしてっ!!」
「………生きて…」
「母さん!!!!!」
頬に伸ばされた手が落ちた。
これが人が死ぬことだと言うことを知った。
信じられなかった…
初めて俺の事を大切と言ってくれた。
そう思うと…目から涙が出てきて……
「母さん…母さん……!」
「拓海くん…」