聞こえる。

放課後。


家に帰った俺は、靴を脱がずに上に行く。
自分の部屋の前に靴を揃えて部屋に入り…荷物を投げ捨て、ベッドにうつ伏せた。
時間は7時前…腹が減った。
無言でまた靴をはき…一階のリビングに向かう。


ドアを開けると、まず目に入るのがゴミ袋の山。
最低限、歩くスペースを空けてあちらこちらに服やらゴミやらが散らばる。
靴で歩くのはこれが理由だ。


そして見えるのが…ソファーで横たわる女。
髪はボサボサで服はスエットのような上下。


これが俺の母親。
世界で一人きりの家族。
父親はいない。
正確には…出ていった。
俺が5歳のときに。



「母さん…」



返事はない。



「飯…作るから。出来たらレンジ入れとく。勝手に…腹が減ったら食って…」



また返事はない。


これが当たり前の光景。
気付いたときからの生活。
毎日の一つ。



『お前が悪いのよ!!』
『お前さえいなければ…』



母さんの覚えてる声はこの二つだけ。
夢にまで出てきそうなガラガラな…キイの高い声…
俺の日常。





そして…
やっと今日が終わり……
…また、今日が来る。




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