聞こえる。


「…ただいまー」



村上 小百合の帰宅。
ぼろいアパートの2階。
そこに入ると…



「小百合っ!あぁ小百合!!
大丈夫だったか?嫌なことは無かったか?
イジメは受けてないよなぁ?!
小百合!よかった。
今日も無事だな?
気が気で無かったんだ…小百合になにかあったら…
たのむ!俺の前から消えないでくれ…どこかになんて行かないでくれよ……
たのむ…」

「大丈夫。大丈夫だよ、お父さん。私はここにいるよ。
大丈夫だから…」

「あぁ!小百合!!」



ひざまずき、腰に手を回して必死に願う父。
そんなこの世に一人きりの家族である父を、冷たい笑みで見下ろす自分。
頭を撫でて…「大丈夫」。
ただそれだけを言う。
それ以外の言葉が出ない。
母親はいない。
私が6歳のときに事故で死んでしまった。



大丈夫…大丈夫だから…



私の日常…


こいつが死ぬまで…一生続いていく日常。





そして…やっと今日が終わり……
また、今日が来る。




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