聞こえる。
逃げ道ならちゃんとある。
「……でね、……がね」
村上は今日も話し捲る。
だが…いつも見たいに俺に「聞いてる?」とか言わない。
元気が無い気がするし…
なにより気になるのは……
「村上…痣…増えてる。どうしたんだ?」
「?!」
右手に握られたような手のあと…首にはキスマークのような赤いところや…
唇が少し切れている。
まるで…唇を自分で噛み締めたような……
「…お前の姿…まさかとは思うけどさ…話してくれない?俺に出来ることなら…」
「何ができるの?」
「えっ?」
「拓海くんに何ができる?
何もできないでしょ?
同情なんていらないっ!!
必要以上に関わらないで!!
………あっ……」
「…………………ごめっ…」
「!!!あっ…の…ごめん。
言い過ぎた…
拓海くんは悪くないのに…
…………ごめん。」
「…いや…俺も、話したく無いだろう事なのに…」
「違う…違うの。私…少しいらついてたっぽい。ごめん…」
お互い何も言えなかった。
村上に何が起きたのかは明らかだった。
問題は誰なのか…どうやら毎日、被害にあってそうだ。
痣には古いのから新しいのまである。
「これ、ね…」
村上が先に沈黙をはらった。
「お父さん…なの。
お母さんが死んでから私に溺愛し始めて…
気付いたら毎日…たぶん初めては6歳から…」
「なんっ?!」
6歳ともなると…少なくとも9年から10年は毎日…となってしまう。
6歳の娘は、それの意味がわかるはずもなく…体にはかなりの負担がかかるはずだ。
「だから…貧血?」
「たぶん…毎日、毎日。
今さら取り返しなんかつくわけない。
私の体には、あいつのものだって印が数えきれないほどあるんだから…
10年は長いね…
きっと私はこれから先…おもちゃとして生きていくんだ。
未来永劫…檻の中で……」
「そんな…」
ふざけるなと思った。
今からその父親を殴り殺したいと思った。
だけど……村上はそうしたいわけじゃ無いって気付いちゃったから…
村上はどんな父でも、憎しみきれずに……
まるで、俺のように…