先生といっしょ!!

「ねぇぇ、ケンくぅん」


さっきとはまるで大違いの猫撫で声。


気持ち悪っ。


どっから出してんだ……!!


あたしが怒りに震えていると、女は更に調子に乗り出した。


ケンの首に腕を回し、甘く囁く。


「このコ彼女って言ってるけど、嘘だよね?

だって俺が愛してるのはミホだけだって言ってたもんね?」


……はぃ?


え、と、つまりあたしはこのカス女と天秤にかけられてて


しかもよりによって大切な日に発覚しちゃって。


トドメに、ケンはあたしよりも身体にベッタリ絡みついた、香水くさい女を選ぼうとしている。


アタシハ、……捨テラレルンダ



ケンの瞳は、あたしを映していなかった。


3年間という長い月日は、そんなことまで教えてしまう。


「最低……」


唇から、声が漏れる。


今にも胸が張り裂けて、悔しさや悲しさが溢れ出てきてしまいそうだ。


あたしは、ケンに背を向けた。


脱いで20分も経ってない靴を履いて、扉を開ける。


「若菜っ……」


ケンの声が聞こえた。


でも、あたしは聞いていないフリをして、202号室を出た。



「さよなら……ケン」


あたしの声は、聞こえただろうか。
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