tear drop
「あの・・わ・・私京子です!
うっ海で助けていただいたお礼っ・・」
かなり挙動不審。
「あ、はい。ちょっと待っててね。」
心臓ばくばく。
声を聞いただけでこんなに緊張するなんて・・。
「どうぞー。」
「あっはい!」
わ・・散らかり放題。そういえば一人暮らしなんだっけ。
メールで、普段は鳶の仕事をやってると言っていた航太。
部屋はいかにも
「男」っぽい雰囲気。
「あ、適当に座っちゃって?」
「あ、うん!」
お土産を渡し、他愛もない話を重ねる2人。
出会いこそ最悪だったものの、
お互い素で喋るうちに気持ちが通じあっていた。
京子の海の時とは違う女の子らしい髪形と服装に雰囲気。
航太の方もまんざらではなくて・・・
気づけば外は真っ暗。
「行けない!帰らなきゃ!」
「え?じゃあ送るよ。」
「大丈夫大丈夫!駅に車・・
じゃなくて・・えっと本当に平気だから!」
駅には車を待たしていた。
でも京子は自分が社長令嬢だということを
言うのはなんだか気が引けた。
世界が違う。
そう思われそうだったから・・。
最後まで「送る」と言い続けた航太に別れをつげ、
急いで駅まで走る。
不思議と心は幸せな気持ちでいっぱいだった。
それから1週間。
相変わらずメールのやりとりを続けている航太から、
荒川の花火大会の誘いが舞い込んできた。
驚きと嬉しさで胸が弾む京子。
もちろん返事は「OK」だ。
そして花火大会の日・・・。
お手伝いさんに浴衣を着付けてもらい
待ち合わせの場所へと向かう。
荒川は凄い人。なんとか場所を見つけて座る。
花火大会が始まり何色もの綺麗な花火が空を舞う。
「綺麗ー・・」
うっとり見とれる京子の横顔を見て航太が決心したように言った。
「あのさ・・付き合おっか?」
突然の告白に戸惑う京子。
『え!?だって2人で会ったのまだこれで二回目だよ?
早すぎじゃない?!男の人って皆こうなの?』
困惑する気持ちとは裏腹に、口が勝手に動いた。
「うん・・。」
こうして2人は付き合いだした。
この頃が、なにもかも1番上手くいっていた
時期だったのかもしれない・・・。



< 5 / 9 >

この作品をシェア

pagetop