精神の崩壊
 シッター音に混じって、誰にも聞こえない程度に不気味な声がする…。
 
 カシャカシャ……
 〈アヒャヒャ……〉
 カシャカシャカシャ……
 〈健二…け・ん・じ…殺…〉
 カシャカシャカシャ……
 
 ちょっと出遅れたが、良子も負けじとシッターをきり、正春達を撮り出した。
 
 カシャカシャカシャ……
 カシャカシャカシャ……
 
 そして間もなく正春は、向かえの車に乗って去って行った。
 
 「今日は、いっぱい正春の写真が撮れたぞっ」
 
 良子はそう呟いて、満足の笑みを浮かべた。
 
 そして、良子は上機嫌で帰路に着いた。
 
 良子は、デジカメで撮った写真をプリントして、コルクボードに貼り付けにんまりとしている。
 
 暫く写真を見た後、良子はベットに新しく買った画集を持ち込み、うきうきしながら見ていたが、いつの間にか眠ってしまったらしく、目が覚めると朝に為っていた。
 
 「あっ、いけない……」
 「早く準備しないと」
 
 そう言って良子が顔を洗い、朝食の準備をしながらテレビを見ていると、テレビでは大変な騒ぎと為っていた。
 
 ニュースによると、男性の惨殺された死体が見付かったと言うのだ。
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