精神の崩壊
 ガタガタと震え怯える正春に静恵が言う。

 〈貴方達は人を殺した……〉
 〈私と同じ殺人鬼なのよ〉
 〈外へはもう出られないの〉
 〈此処で暮らす事が運命…〉
 〈私と貴方は、結ばれる為にこの星に生を受けたのよ……〉

 静恵は、そう言って高笑いをしながら正春から離れ、天に両手をかざしクルクルと回り鼻歌を歌う。

 正春はそんな静恵を見て、その異状さ、崩れてしまった女の精神に哀れみを覚えた。

 全ては自分の招いた事……。

 しかし一緒には暮らせない。

 もし、私がこの女の娘を轢き殺したと言う事実を知り、私へ対する怨みが女に蘇った時、この女は何をするだろうか……。

 「何度も言うが、貴女とは一緒に暮らせない」
 「私は本当に貴女なんか愛してないんだ」
 「解ってくれ、お願いだ…」

 正春は、気が付くとそう言っていた。

 〈どうしても一緒に暮らせないって言うの……〉
 〈それじゃぁ……死んで…〉
 〈一緒に死にましょう……〉
 〈ウフフフフッ……〉
 〈アハハハハハハハハッ…〉

 そう言って静恵は正春と千春の元へ近付いて来た。

 「何をする気だ……」
 「止めろ止めてくれーーっ」

 そして、正春と千春は再び闇へと堕ちて行った。
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