精神の崩壊
　明日は、正春の新しい画集の発売を記念して、サイン会がある。
　
　買ったその場で、本にサインをして貰えるのだ。
　
　良子は、そのサイン会へ行く為の洋服を買いに、とあるデパートへ来ていた。
　
　「いくらサイン会と言っても変な格好は出来ないわ」
　「何か良い服ないかしら」
　
　そう言って良子は、色々な洋服屋さんを物色していた。
　
　デパートの至る所で、正春のデザインした、ポスターが目に付く。
　
　これは、非売品の宣伝様ポスターなので、買う事は出来ないが、良子はどうしてもそのポスターが欲しかったので、辺りを見回し、人がいないのを確認してから、こっそりとポスターを剥がし、頂いた。
　
　「やばい、やばい…」
　「見付かったら大変…」
　
　そう言って、良子はその場からそそくさと立ち去った。
　
　そして良子は、何食わぬ顔をして、何事も無かったかの様にまた洋服を物色しだした。
　
　もう４時間もあれでもない、
これでもない、と探し回っていた。
　
　「これもいまひとつねっ」
　「良い服なっ……」
　「あっ」
　「この服可愛いじゃない」
　
　そしてやっと、満足の行く洋服を見付けだし、良子はその洋服を買い、帰路に着いた。
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