精神の崩壊
未だ見えぬ犯人
 テレビでは、連日連夜連続猟奇殺人事件のニースが流れていた。
 
 ニースでは、他にも食品偽造事件や、放火事件、過去声優としても活躍していた人気特殊メイクアップアーティストの瀬川静さんが何者かに誘拐された、等の事件も報じられていたが、猟奇殺人事件の陰に隠れ余り報じられてはいなかった。
 
 テレビや雑誌、新聞等で大々的に報じられてはいるが、一行に進展が見られない事から、警察へ対する市民の不満と怒りの声がそこら中で上がっていた。
 
 警察は、この状況を早くどうにかしたいと思い、女の声を録音して、正春に聴かせる等したが、全く心当たりがないとの事だった。
 
 この事件がきっかけで、正春も余り活動が出来ないでいた。
 
 四六時中警察に見張られ、また一度外へ出れば、報道陣に囲まれ仕事どころではなかった。
 
 正春が、リビングでくつろいでいる時、一本の電話が掛かって来た。
 
 ピルルルルルッ……ピルルルルルッ……
 
 「はい、真田ですが」
 「ざまみろ、調子こいてるからこう為るんだよ」
 
 ツーッツーッツーッツーッ……
 
 「またか……」
 
 事件以来正春の元には、時折この様な心ない電話が掛かって来る様に為っていた。
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