精神の崩壊
 正春は、それを見て直ぐにあの女の言葉が頭に浮かんだ。

 遂に、遂にまた自分の絵を題材とした事件が、今また起こったのだ。

 ニュースは、その事件をこう伝えていた。

 「発見された遺体は、まるで……を思わせるかの様に、木から吊されており……」
 「その下には……」

 それを聞いた瞬間、正春の頭には、直ぐに題名が浮かんだ。


 その頃、現場の捜査員達は、仲間の惨殺体を前に、茫然と立ち尽くしていた。

 被害者は、今回の猟奇殺人事件を担当している捜査官の一人で、阿部良司捜査官だった。

 木の枝に、蜘蛛の巣状に内臓が絡み付けられており、そこにカラスの死骸等が引っ掛けられている。

 そして、その中央には、蜘蛛の様に身体を変えられた、阿部捜査官の遺体がワイヤーで吊されており、風に吹かれて、内臓のネットの上で、ゆらゆらと揺れていた。

 そしてその木には、題名の書かれた紙が貼付けてあった。

 『題名:スパイダー』

 そして、お馴染みの……

 『芸術までの工程』

 と書かれたDVDが、置かれていた。

 遂に犯人の魔の手は捜査員達にも及び出した。
< 48 / 112 >

この作品をシェア

pagetop